ミミ言

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魔王・第9話 ②

~第9話 ②~

「私は真犯人、雨野真実です。」と言って、ニヤッと笑う領。一瞬、何も言えない芹沢だが、「そう言えば、満足ですか?」と聞く領。
「ふざけるな、あんたが宗田を殺したんだ。熊田さんも陽介も池畑も宗田も、みんなあんたが殺したんだ!」と領の胸倉を掴み、突き放す芹沢。
襟を正し「人殺しは私ではなく、あなたです。真中英雄の…そして彼の家族の人生までもあなたが一瞬にして奪ったんです。大切な人を無残に失った悲しみ、今のあなたならわかるはずです。」と領。芹沢は、何も言えずにいる。
「だからって人を殺していいわけじゃないだろう。どれだけ他人を巻き込めば気が済むんだ。何で俺じゃないんだよ。あんたの目的は、俺だろ?やるんだったら俺を殺せ!」
「私が真犯人だとおっしゃるんなら、確実な証拠を持ってきて下さい。」
「これ以上、犠牲者は出させない。あんたは、俺が必ず捕まえてみせる。」
「あなたの無念さはよくわかります。だから、早く私を捕まえて下さい。」と言い放ち立ち去る。
領の後ろ姿を睨みつける芹沢。

暗室の中。芹沢の写真を見つめながら「やっと…会えましたね。」と呟く領。

芹沢が、雨野真実の正体が成瀬弁護士だと言ってるとか、と詰る管理官。中西は説明するが、証拠のない状態の可能性だけで、法曹界ホープが誤認逮捕になったら責任は誰が取るんだ、と怒鳴る。しかし、中西は、部下を信じるのに証拠がいるのか、私は部下を信じます、と歯向かう。

領との会話を思い出し、何で気付いてあげられなかったんだろう、と涙ぐむしおり。

暗室の中で、×がついた写真と共に、領はしおりの写真にも目をやる、気持ちは揺らいでも、もはやどうにもならない。

宗田の司法解剖の結果は、薬物(青酸カリ)による中毒死、と出たと倉田が報告。そして、芹沢に、現場からこんなものが、と万年筆を渡す倉田。芹沢は、驚きを隠せない。

出張から戻った典良に、葛西は挨拶をする。典良は「例の件(宗田)はどうなった?」と聞く。葛西は「ええ、問題なく…。」とオドオドしながら、ウソをつく。「そうか。ご苦労だった。」とウソで答える典良。
栄作に出張から戻ったと挨拶をしているところへ、直人が飛び込んでくる。そして、栄作達に、宗田が死んだことを伝える。栄作と葛西は驚く。直人は、この中に被疑者がいる、と話すが、栄作は、また人殺しを作る気か!と怒鳴る。殺害現場に落ちていた万年筆を取り出し、被疑者の方へ向かって歩く直人。そして、葛西に「わかるな。」と言う。万年筆には、H.KASAIの名前が入っていた。
俺は殺してない、と直人に訴える葛西だが、そこへ麻里がやって来る。麻里を見て、無言のまま、連行される葛西。驚いていると、典良が部屋から出てきて、宗田を殺した容疑だ、と涼しげな顔で麻里に告げる。実は、わざと葛西の万年筆を持ち出し、現場に置いたのは典良だったのだ。
きっと何かの間違いだ、と栄作に何食わぬ顔で言う典良。
栄作は、選挙も近いのに、スキャンダルがあってはならない、どんな手を使っても葛西を犯罪者にするな、と言う栄作に、典良は憮然とした表情。

取調べを受ける葛西。宗田は居候をしていたようだが、争う声を隣人が聞いているんだが、と言う中西に、麻里とのことで恐喝をされていたことを言えない葛西。宗田が殺された時間のアリバイを聞いても、麻里と一緒だったことを言えず、一人でドライブをしていた、とウソをつく葛西。アリバイを証言する者も誰もいない、と。
ドアをノックする音。高塚が神妙な顔で立っている。背後から足音が近づいてきて、姿を現したのは領だった。睨みつける芹沢。葛西の弁護で来た、という領。領も芹沢を挑発するように睨みつけている。

署内の廊下。狙いは何か?と聞く芹沢だが、栄作からの依頼で葛西を助けに来た、という領。芹沢は、領が葛西に罪をなすりつけたんだろう、と。そして、目的はあなたと同じ、何者かが葛西さんを落としいれようとしているのを証明したい、と答える領。しかし、仕組んだのは領に違いない、という意見を曲げない芹沢。
「助けてあげたくないんですか?無実の葛西さんを。」と平然と言う領に何も言い返せない芹沢。宗田を殺した犯人を言え、と迫るが「それを探すのはあなたの仕事です。葛西さんの無実を証明したければ、必死で証拠を見つけて下さい。」とニヤッと笑う。

典良に、領が犯人だから、葛西の弁護を外すように言う直人だが、この前は栄作を人殺しと疑っていた直人の言うことを全く相手にしない。

取調室。取り調べの合間、葛西は領に、自分は殺してない、と告げる。領は「助かる方法は一つ。真実を全て話すことです。真実を偽るものが、救われることはありません。」と芹沢の方に視線をあわせるように言う。葛西の目も泳ぐ。居たたまれない表情の芹沢。
中西が入ってきて、死亡推定時刻の30分前、現場付近に、葛西の車が通行していた記録が残っていた、と言う。葛西はうろたえ、領を見る。呆然とする芹沢。そして、このままでは起訴をされる、殺人犯になる、どこかに寄り道はしなかったのか?と聞く。「お前のアリバイを証明できそうな奴がいたら、俺が絶対探し出してやる!」と必死に言う芹沢の言葉に、ニヤニヤ笑っている領。芹沢は、それに気付き、自分も領に操られていることに一瞬気付く。領は余裕のある静かな表情で芹沢を見ている。

栄作と典良に「自分はやっていない、信じて欲しい。」と葛西が言っていることを告げる。起訴されるのか聞く典良。「いえ、犯人は他にいるはずです。」と少し笑みを見せ、典良をじっと見つめて答える領。視線をそらす典良。領は、なおも典良を見つめ続けている。
「葛西さんの無実も直に、証明されるでしょう。真実は、必ず明らかになるはずです。」と言う領の言葉に栄作は満足げだ。典良の表情は浮かない。

署内。通話記録の一覧を見て、高塚が葛西は殺される直前も、それ以外にも頻繁に典良に電話している、と言うが、直人は、その番号は典良の番号じゃない、と言う。そして、その番号に電話をかける直人。しかし、電話に出たのは、麻里だった。葛西の通話記録を調べてたら、この番号が…と言う直人に、麻里は焦りながら、迎えに来てくれたりするから、よく葛西に電話をする、と言う麻里。昨日の夜も電話をしたのかを聞く。そうだと答え、葛西は人を殺すような人じゃない、と言う麻里。そこへ、中西がやってきて、令状が出たので、葛西の自宅と職場を家宅捜索するように指示する。直人は、待って欲しい、と言うが、「頼むぞ。」とだけ言う中西。折角、雨野事実まで漕ぎ着けたのに、芹沢の推測だけでは、誰も動かなくなっている状況にまできていることを思い知らされる。

葛西の部屋。家宅捜索をしながら、仲間4人が写っている、中学の頃の写真立てに入った写真に目をやる芹沢。殺された石本と宗田の顔、疑われている葛西の顔が脳裏に浮かぶ。そこへ高塚が、宗田の鞄の中に、この写真が入っていた、と麻里が典良のネクタイを直している写真を持ってくる。

ホテル。典良に、宗田が持っていた写真を見せ、何故、宗田がその写真を持っていたのか聞く直人だが、典良は持っていた写真はこの1枚だけか?と聞き返す。そうだとわかると、典良は、自分にもわからない、と答える。
そこへ、栄作が入ってくる。そして、直人に「家族の職場を家宅捜索とはな。しかも葛西はお前の友人だろう?親子の縁を切った次は友人との縁を切るつもりか。まるで手負いの獣だな。追い込まれたら、誰かれと見境なく襲いかかる。情けない奴だ。」と吐き捨てる。その言葉を聞き、息子さんは、葛西の無実を証明するためにやっていることだと栄作に言う高塚だが、栄作は「こいつはもう息子じゃありません。」と言い、部屋を出て行く。呆然とする直人。そして倉田が葛西の机の中からこれが、と白い粉の入った茶色の小瓶を持ってくる。典良は、直人達のやり取りの背後で、ひとりほくそ笑む。

署内。中西から、葛西の職場で押収された青酸カリは、宗田が殺された時に使われた青酸カリと同様のもので、証拠が出たので葛西を被疑者として送検する、事件当夜の行動と青酸カリの入手経路を調べるように指示をとばす。散り散りに去っていく仲間達の中で、ひとり立ち尽くす芹沢。いくら葛西がはめられたとわかっていても、証拠が出てしまったからには、どうすることもできない。高塚も倉田も中西も、何も言えず芹沢を見ている。
そこへコツコツと足音が近づいてくる。「諦めるんですか?」と言う声に、振り返る芹沢。そこには領が立っていた。
「葛西さんは、まだ黙秘を続けています。このままでは無実の友人を殺人犯にしてしまいますよ。」と言い、芹沢をじっと見つめ、去っていく領。追い詰められた表情の芹沢。
芹沢は挑発的な領の言葉に、思い立ったように、突然、立ち去っていく領を追いかける。「芹沢!」と叫ぶ中西。
しかし、領の肩を掴み、振り返らせ、「お願いします!悪いのは全部俺です。全部俺が悪いんです。もう俺以外の人間を苦しめないで下さい!」と土下座する芹沢。唖然とする中西と高塚と倉田。
「葛西を…葛西を助けてやりたいんです…。俺はどうすれば…どうすればあいつを救ってやれるんですか?」と領に聞く。
領は芹沢を見下げるように「いいんですか?真実があなたの胸を貫くことになっても。」
「構いません。それであいつが救えるなら。」と、領をすがるような目で見る芹沢。
「人は大切な誰かをかばう時、真実を隠すものです。それを一番わかっているのは、あなたのはずでは?楽しみですね、あなたが真実を知った時、どんな選択をするのか。」と笑みを浮かべて立ち去る領。
芹沢は、呆然とし、領に投げかけられた言葉を理解しようとしている。

事務所に戻ると、事務所のドアの前で、立っているしおりを見つける領。瞬間、時間が止まったようになる。うろたえる領。11年前、傘を貸してくれた少年と領の後ろ姿が似ていると早く気付くべきだった、本当は優しい人で、今もその優しさは変わらない、もうこんなことはやめるように言うしおりに、「あの頃の僕はもういないんです。もう止められないんだ!」と言い、部屋に入りドアを背に涙ぐむ領。

署内。自分のデスクで「真実を隠す…。」領の言った言葉を思い出すように呟く芹沢。そこへ、しおりが思いつめた表情で入ってきて、犯人を止めたい、自分にできることはないかと申出る。芹沢は宗田に届いたカードを差し出す。ためらいながらも残像を読むしおり。しおりが見たのは、男の人と女の人が写っている写真だという。芹沢は、家宅捜査の時に発見した典良と麻里の写真を見せる。しかし、しおりはこの写真じゃない、女の人はこの人だが、男の人はもっと若く眼鏡をかけて、抱き合っていた、と言う。そして、芹沢の机の上にあった、葛西の写真を見つけ、この人だと言うしおり。
驚愕する芹沢。人は大切な誰かをかばう時、真実を隠すものです、という領の言葉が脳裏に響き、葛西の写真に目をやる芹沢。そして、葛西のところへ行く芹沢。

大隈と電話で話す典良。事は予定通り進んでいる、青酸カリも役に立ったと言う典良。大隈は、典良は出張で九州にいたことになっていからアリバイも心配ない、と話す。

廃墟の建物の中から出てくる典良の写真を見ながら、クックックックッと笑う山野。

葛西が入っている留置所にやってきて芹沢は「違うよな。そんなはずないよな。お前が、麻里さんと…。兄貴を裏切ってないよな。」と葛西に向かって言う。
葛西は、無言のままだ。そして、葛西は麻里をかばうために、宗田が殺された時間のアリバイを言わない、お前は無実なんだ、と言う芹沢に、「俺が宗田を殺したんだ!あの人を巻き込まないで…。犯人は俺だ!俺がやったんだ!」と泣き叫び、芹沢にしがみつく葛西。

領の部屋。家族3人で写った写真を見つめながら、「もうすぐ…すべて終わるよ…。」と呟く領。
ここで…続く。