ミミ言

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魔王・第9話 ①

~第9話 ①~

「雨野真実(あまのまこと)の正体がわかりました、真中友雄です。友雄は生きていたんです。死んだ親友と入れ替わって…その親友の名前が成瀬領だったんです。雨野誠実は成瀬領です!」と走りながら、携帯で中西に報告する芹沢。

拉致され、廃墟の建物の中に、連れてこられる宗田。必死に抵抗し、地面に落とされる。顔を上げるとそこには大隈が立っていた。そして、大隈の背後には葛西がいる。葛西を見て驚き、歯向かって行く宗田だが、複数の男達から激しく暴行を受ける。
葛西はその様子を見て、段々居たたまれなくなる。「助けてくれよ。」と言う宗田。大隈の部下が鉄パイプを振るおうとした瞬間「やめろ!」と叫ぶ葛西。「すみませんでした。許してください。助けて下さい。」と泣きながら叫ぶ宗田。
大隈にもういいです、と申し出るが、大隈からはここでやめたら後から面倒なことになると忠告される。しかし、中学からの友人なので、最後は自分でケリをつける、という言葉に、あっさりと引き下る大隈達。近づいてくる葛西に、宗田は怯え、「ウソだよな、お前はそんなことする奴じゃないよな。」と言う。しかし、葛西は「お前の処理を命じたのは、典良さんだ。お前は死ぬしかないんだよ。」と言う。宗田は、もうお前には、迷惑はかけない、だから助けてくれ、友達じゃないのか、と命乞いをする宗田。
一発殴り、倒れ伏す宗田に「いいか、お前は今、死んだんだ。二度と俺達の前に現れるな。」と言って、と見逃がす。宗田は、小さく何度も頷く。

芹沢は、領の事務所に行き、ドアを激しく叩く。しかし、応答がない。高塚に、領の連絡先を調べるように指示をする。

葛西が、廃墟を後にすると、麻里から携帯に連絡が入る。
車の中。麻里は、自宅の玄関のドアに麻里と葛西が抱き合っている写真があった、きっと宗田の仕業に違いない、と言うが、葛西は、もう宗田は二度と自分達の前に姿を現さないから安心するように言う。そして、麻里への最後の真剣だった思いを告げる葛西。麻里も、芹沢家という家にずっと押しつぶされそうだった、でも、葛西が傍にいて支えてくれたから、耐えてこられた、今までありがとう、と言う。涙ぐむ葛西。そして「おやすみ。」と言う麻里に、「おやすみなさい、奥様。」と返す葛西。車を降り、サイドミラー越しに立ち去る麻里の後ろ姿を、せつなそうに見つめる葛西。

廃墟に取り残され、ボロボロになって動けない宗田に、コツコツと近づいてくる足音。怯え、這うように逃げようとする宗田。見ると、典良だった。蔑んだ目で宗田を見ている。
典良は「ひどいやられようだ。」と宗田の顔を覗きこむ。宗田は、葛西が典良を裏切って不倫の関係だった、という事実を知らせようとしただけだ、と言う。典良は、宗田に気付かせてくれて感謝してるよ、知らないままだったらどんなに大恥をかいたか、と言い、シガレットケースを取り出し、タバコを差し出す。宗田は、1本手にする。
「どうしたら、いいのか本当に悩んだんだ。それで、やっと結論が出た。」と、次に火を差し出す典良。わかってもらえればいい、悪いの葛西だと、言いタバコを吸う宗田。突然、苦しみ出し、もがくようして、息が絶える。その光景をじっと見つめる典良。そして、葛西のズボンのポケットから、少し出ている写真に気付く。取り出すと、麻里と葛西が抱き合っている写真だ。「こんなバカのことをするからだ。」と吐き捨てるように言い、立ち去る。立ち去る際に、万年筆が落ちる。

高塚からの連絡を待っている間に、芹沢の携帯が鳴る。着信の表示は、宗田からだ。
「宗田、どうした?」と話しかけるが、返事がない。嫌な予感をよぎらせながら、何度も「どうした?何があったんだ?宗田」と呼ぶ芹沢。
倒れた宗田の近くに、携帯を持って、立ちすくむ革手袋をはめた男、領である。領が、宗田の携帯から芹沢宛に電話をしたのだった。芹沢が、宗田に呼びかけている間、領は無言で、宗田の遺体を見つめ、携帯を地面に置き、そして、宗田の近くに落ちていた万年筆を拾い、じっと見つめ、また元の場所に置き、立ち去る。
芹沢は、宗田に何かがあったと察知する。中西から宗田の発信エリアがわかった、と言われ、廃墟の建物に急行する。しかし、そこにはもう動かなくなった宗田が横たわっていた。
宗田を抱きかかえ、目を開けろと泣き叫ぶ芹沢。「雨野…」と振り絞るような声で呟く。

暗室の中、宗田の写真に×をつける領。携帯が鳴り、出ると芹沢からだった。
「あなたの本当の姿がわかりました。」と言う芹沢。
電話を受ける領の瞳が、赤い光と共に鋭く光る。

芹沢に呼び出された領。
待ち構えていた芹沢から、いきなり殴られる。領は口が切れ、血が出るが、無表情のままだ。
「正直に言え。あなたの正体は、英雄の兄、真中友雄。そして連続殺人の真犯人、真中友雄だ、違うか!」と言う芹沢。
「私は真中友雄で、真犯人、雨野真実です。」と、答える領。