ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

魔王・第8話 ①

~第8話 ①~
ハッと我に返り、しおりから離れる領。「すみません…。送ります。」と言って、先に歩いていってしまう。カフェの近くまで来ると、急に雨が降り出し、急いでカフェへと走る領としおり。しおりは領のために傘を取ってきて手渡す。
しおりから傘を受け取った時、領はふと子供の頃を思い出す。雨の中、雨宿りをしている少女。意を決して、走り出す少女に声をかけ、「これあげる。」と傘を手渡す領。少女が「ありがとう。」と言うと「僕のほうこそありがとう。弟のために証言してくれて。」と言って走り去る。その少女はしおりだ。
何も言わず、降り注ぐ雨を見つめている領に、どうかしたのか、声をかけるしおり。領は、幼い頃のしおりの顔と重ねるが、「いえ、おやすみなさい。」と言い立ち去る。

芹沢は、池畑が死んだ奴が相手じゃ捕まえられない、と言った、それは自分達が死んだと思っている奴こそ犯人だ、という暗示だったのでは?真中友雄が生きていた、という証拠をつかんでいたはず、と中西達に話す。

領と別れ、しおりがカフェに入ると、扉が開く。振り返ると、芹沢だった。池畑が死んだことを話し、池畑は真犯人を知っている、と言っていたので、池畑に届いたカードから残像を読み取って欲しい、としおりに頼む。
しおりが見た残像は、家庭裁判所で握手する栄作と弁護士の熊田、俯いた暗い表情の直人だった。そして、すごく雨が降っていた…と話すと、芹沢は、「あの日だ…。11年前、俺が無罪になった日です。土砂降りの雨の日でした。」と言う。そして、「雨…。」と呟き、赤い封筒の雨野真実という名前を見て、「雨の真実…。雨の日、無罪として葬られた真実…。雨野真実(あまのまこと)という偽名もそれがアナグラムで真中友雄となったのも、さっきの残像も、やっぱり犯人は、自分が真中友雄だというメッセージを送ってたんです。」と。
しおりは、もうその人は死んでいるのでは?と言うが、池畑は生きているという証拠をつかんでいたかもしれない、と芹沢。しおりは、その人に会ったことはあるのか聞くが、昔、会いにいったけど会えなかった、と答える芹沢。しかし、しおりは、会ったことがあるかもしれない、弟のために証言をしてくれてありがとう、と雨の日に傘を貸してくれた人がいた、と言う。あの人が雨野真実…と呟くしおり。

領は、芹沢の写真を見つめる。そして赤い封筒と〝ワンドの5〟のカードを手にするが、しおりの「私じゃ成瀬さんの天使にはなれませんか?」という声が脳裏に浮かび、気持ちが揺らぐ。そして、赤い封筒を悲しそうな表情で、握り潰す。

カフェ。しおりは、並べられたタロットカードの中から、1枚選ぶと〝ナイト オブ ソード〟を引く。背後から、友達がカードを取り上げ「おっ、ナイト オブ ソード。更なる前進か。はい、これ。白馬の王子様、誘ってみたら?」と花火大会のチラシを渡す。照れながら無理だ、と言うしおり。

管理官に真中友雄が生きている、と訴える芹沢。死んだ人間が犯人じゃ、この事件に解決はないな、と相手にしない。芹沢は、事件は自分が殺されるまでは終わらない、それまで自分の周りの人間が殺され続けるんです、だから少しでも可能性があるなら、それを諦めるわけにはいかない、と説明する。
そこへ、芹沢宛に切手の貼られた赤い封筒が届く。中西達は驚きとショックを隠せない。

図書館へ向かう領だが、入口で足が止まり、引き返そうとしたところで、しおりと偶然に会う。先日は驚かせてしまいすまない、クッキーおいしかった、と簡単に挨拶をすませ、立ち去る領。少し迷って、勇気を出して呼び止めるしおり。花火大会のチラシを見せ、今度の土曜日にあるので、一緒に行かないか、と誘うしおり。暗い顔で戸惑う領。しばらく考えた末に、「その日はあいています。」と返事をする領。しおりは喜ぶ。しかし、その光景を芹沢は、切ない表情で見つめている。そして、「あの…」と二人に近づき、自分宛てに雨野から赤い封筒が届いた、としおりに見せる芹沢。領は、その封筒を見て、何故?という表情で目が泳ぐ。

「やっとつながりましたね。」と電話ボックスの中から領に電話をする山野。
「何故、勝手に封筒を送ったんです!」と責める領。
「ここ数日、計画通りに進まないんで、気をきかせて。カードは、〝ワンドの5〟でよかったんですよね。次のターゲットは誰です?」
「復讐をやめるつもりですか?」と無言の領を逆に山野が責める。
「そうじゃない。」
「英雄の未来を奪った奴等なんですよ。」
「そんなことはわかっています。」
「芹沢直人を許すんですか?」
「違う。」
「あいつに踏みにじられた英雄を、あなたまで見捨てるんですか?」
山野に怒鳴られ、ハッとする領。

芹沢は、自分に送られてきたカードをしおりに見せる。〝ワンドの5〟、ジレンマ、仲間同士の争いを意味する、と告げられる。

茶店。宗田と麻里がいるところへ、飛び込んでくる葛西。
もう麻里との関係は終わった、頼むからもう忘れてくれと言う葛西に、宗田は、それとこれは話が別、必ず自分を支配人として芹沢のホテルで雇う話を決めてこい、そして、不倫のことがマスコミにばれたら恰好のネタだろうな…と脅す。途方にくれる麻里に、葛西は自分が何とかする、と言う。
その傍で、大隈の部下が一部始終の話を聞いており、麻里の不倫は確かで、宗田がそのことをマスコミにばらす、と脅しをかけているようだ、と典良に報告。典良は、大隈の部下を使って、麻里と葛西の関係を調べさせていたのだった。

領の部屋。オルゴールを開け、英雄と母親と自分が写った写真を見つめている。
「あいつに踏みにじられた英雄を、あなたまで見捨てるんですか!」という山野の声が頭の中でこだまする。
英雄への思い、揺らぎかけた苦痛な気持ち、目を瞑りうつむくが、次に顔を上げた瞬間、魔王の顔になっている領。