ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

魔王・第8話 ②

~第8話 ②~

葛西は、典良に宗田のことをお願いする。しかし、無理に決まってるだろう、宗田に支配人なんて、と断れられる。そして、どうしてそんなバカなことを言うのか訊ねる。葛西は、実は宗田に脅されている、と言う。典良は、麻里との不倫で脅されていることを白状するのか、と葛西を見つめているが、葛西は、11年まえの事件を公にすることで脅されている、だから要求通りに…と言うが、典良は、きっぱりとできない、と言い放ち、しかし宗田の対処は俺が考えておくと部屋を出て行く。部屋を出た瞬間、これまでに人の良さそうな典良が見せたことのない表情になる。

自宅に戻る葛西。宗田はどうだったかと聞くが、支配人クラスは無理だと言い放つと、激高し、突然飛びかかって葛西をソファに押し倒す。自分ばっかりいい思いをし、これまで自分がどんな思いで生きてきたのかわかっているのか、11年前に直人の父親に正当防衛だと嘘つかされて、それ以来、ずっと自分まで人殺しの気分だった、過去をひきずって生きているのはもうたくさんだ、これが最後のチャンスで、もし駄目なら、全部ぶちまけて、芹沢一家と葛西と心中だ、と捲し立てる宗田。宗田のすごい剣幕に葛西はうろたえる。
すると、ドアをノックする音。葛西がドアを開けると、赤い封筒がひらひらと床に落ちる。付近を見渡すが誰もいない。拾い上げ、宗田にも見せる。封筒には雨野真実の名前が書かれているが宛名は書いていない。中に入っていたタロットカードは〝ワンドの5〟。芹沢が言っていた殺人予告の封筒だ、と二人とも認識し、恐怖心を抱くが、「どっちにきたんだ…?」と言う葛西。宗田は、葛西の自宅にきたんだから、葛西宛だろう、と言うが、宗田が自分のところにいることを犯人が知っていれば、宗田の可能性もある、と言う。そして、芹沢に連絡をしようとする葛西を、自分達のことが全部、直人にばれてもいいのか、と宗田が止める。

再び、激しくドアをノックする音。芹沢だった。宗田は、届いた封筒を本棚に隠す。自分にもタロットカードが届いたが、葛西や宗田には届いていないか聞く芹沢。宗田は、届いていない、と答える。それに続くように葛西も届いていない、と答える。ターゲットに恨みを持つ人間を利用して殺させるのが犯人の手口だから、届いたらすぐ連絡するように、と言い立ち去る。ドアを閉め、葛西は宗田を見る。宗田は「恨みを持つ人間か…フッ。」と呟く。葛西は、さっき宗田に、お前と心中だ、と言われた言葉を思い出す。

暗室の中。宗田と葛西の写真、典良と麻里の写真をじっと見つめる領。

街中をぷらぷらと歩いている宗田。目の前に山野がいるのを見つけ、声をかける。山野は嫌がる。その様子を、大隈の部下がデジカメで撮影している。それに気付き、「何だ、あいつ。」と指をさす。
すると舌打ちをして、大隈の部下は去っていくが、山野は宗田に、「あいつ、盗撮してたぞ。誰かに狙われてるのか?」としらじらしく言う。怪訝そうな顔をする宗田。宗田は、芹沢が言った、「ターゲットに恨みを持つ人間を利用して殺させるのが犯人の手口」という言葉を思い出し、葛西…と呟く。それを傍らで聞き、ニヤニヤ笑う山野。山野は偶然ではなく、わざと宗田の前に現れたのだ。

栄作と典良と領の3人で打ち合わせをしている。栄作は、ドバイのプロジェクトを典良に全て任せると告げる。驚く典良だが、栄作は、勘違いするな、後継者に相応しいかどうかの試金石だ、領の提案だ、と言う。領を見る典良。
「迷ってらっしゃるんですか、トップに立つ人間は、決断力が必要ですよ。」と言う領の言葉に、「やらせて欲しい。」と言う典良。栄作は選挙の準備があるので、典良の相談にのってやって欲しいと言い部屋を出て行く栄作。
更に領は「経営者はクリーンなイメージを求められる時代です。表ざたになって困るようなことはありませんね。」と確認する。うろたえる典良。
そこへ、大隈の部下から携帯に連絡が入り、宗田が出版社の人間と会っていた、あの話をマスコミにするのは強ち嘘ではないんじゃないか、と報告する。領の手前、至急対応を検討する、と険しい表情で言う、典良。
領は、思惑通りに事が運んでいるその様子に笑みを浮かべる。
典良の部屋を出る領。憔悴しきった死人のような表情で歩いてくる葛西と会う。「どうかしたんですか?悩みごとがあるならいつでも相談にのりますよ。」と声をかける領。
葛西が、典良の部屋に入っていくのを見つめる領。
葛西が部屋に入ると、宗田の件は大隈に処理をさせることにした、と典良から告げられる。処理という意味を確認すると、消すということだ、と典良に言われ、狼狽気味の葛西。そこまでしなくても、と止めるが、典良は俺が決めたことが、逆らう気じゃないだろうな、と強い口調ですごまれ、大隈に今日中に連絡をしておくように言われる。典良は葛西を睨みつけるが、葛西は不安げな表情で目も合わせらない。

領の事務所。葛西が訪れている。「やっぱり何か悩んでいらっしゃったんですね。」と言う領。葛西は、知り合いが、あること(不倫)で脅迫されている、と話し出す。領は、法律的に対処することは可能だが、全ては解決しない。訴訟により公にしてしまっては、その人が守りたい秘密も大切な人も守れなくなってしまうのでは?と言う。愕然とする葛西。
領の事務所からフラフラと出てきた葛西が出した結論は、大隈に電話をすることだった。

葛西が玄関のドアを開けると、宗田がいた。宗田に「支配人の件、うまくいくかもしれない。」と言うと、宗田は何も言わず、無表情でまんじりとした態度で立っている。そこへ、ドアをノックする音がし、芹沢が飛び込んできて、「本当か、カードが届いたって?」と言う。葛西は、驚き、宗田を見る。そして、封筒とカードを芹沢に渡す。「俺が呼んだんだよ。誰かに狙われてたら大変だと思ってな。」と言う宗田。芹沢は、どっちに届いたんだ?恨んでる人間に心当たりはないか?と聞くが、二人ともわからない、と答える。芹沢は自分のせいですまない、犯人は必ず逮捕する、お前達には指一本触れさせない、ここにも警備をつける、と言う。葛西は思わぬ事の展開に何も言えず俯いたままだが、そんな葛西を笑みを浮かべながら宗田は見ている。

部屋で花火大会に着ていく服を、鏡の前で楽しそうに選ぶしおり。

領は、机の上にある花火大会のチラシを見て、ここまできて止められない復讐と、しおりへの思いとが一緒になって、心がグラグラ状態。

芹沢が署に戻ると、皆、残業をして、友雄が生きているという証拠がなかなかつかめない…と頭を悩ませている。新聞記事に目をやる高塚の横で、芹沢は、少年2人で野宿という言葉にひっかかる。死んだ人間は顔の原形がないから、学生証で判断した、ということはもう1人の少年と入れ替わったんだ、と言う芹沢に、中西達もハッとする。

芹沢達は、11年前の事件現場で聞き込みを始めると、この前も記者が同じことを藤野という男に聞きに来ていた、ということがわかる。藤野に話を聞こうとするが、藤野は何も知らない、の一点張りで、芹沢達の話に耳も貸さない。芹沢達を振り切り、事務所に駆け込むと、また何かが届いてる、と事務員から赤い封筒を手渡される。切手の貼られた赤い封筒だ。中には、11年前の事件の新聞記事と、〝口は善悪の門、舌は禍の根〟と書かれた紙と、援交の写真が入っていた。

「今夜、しくじるなよ。」と葛西に釘を刺す典良。葛西は、宗田に警察の見張りがついている、と言い訳をするが、会社の存亡がかかっているんだ、と言う典良。そこへ栄作が入ってくる。典良は、もう一度、葛西に「頼んだぞ。」と耳打ちし、出張へと出かける。典良の今までとは違う表情を見て、栄作は、仕事を与えたのでやる気になったと思い、葛西にも力になるよう指示をするが、浮かない表情の葛西。

領の事務所。険しい顔で窓際に立っている領。今日は花火大会の日だ。しかし、事務員が、急に相談したい、という人が来ている、と申し訳なさそうに部屋に入ってくる。領は、花火大会のチラシに目をやるが、「いいですよ、今日は予定がありませんから。」と仕事を引受ける。

藤野の態度から、絶対に何か隠しているはず、と納得がいかない芹沢。しかし、家出少年ということから、未成年で家がないなら、補導歴があるかもしれない、真中友雄も補導をされていたら、一緒にいた少年が誰かもわかるかもしれない、と気付く。
そして、10年前の膨大な数の補導記録のファイルから、虱潰しに手がかりを調べていく芹沢と高塚。

待ち合わせの橋の袂。待ち惚けを食うしおり。領の携帯に電話をするが、つながらない。
花火大会はもう始まっており、花火の音が夜空に響く。

花火大会は終了し、帰る人々を見送りながら、携帯を握り締めるしおり。泣きながら帰ろうとするところへ、領が現れる。急に仕事が入り、連絡もできなかった、と謝る領。しおりは、来てくれてよかった、と微笑むが、領は思いつめたような表情。しかし、まだ時間は大丈夫か?と聞き、手持ち花火をする二人。領が噴出花火を地面に置き、火をつけようとすると、「あー、これが最後か。」と呟くしおり。一瞬ためらうが、火をつけ、花火越しの喜ぶしおりを、悲しい表情で見つめる領。

カフェまでしおりを送る領。今日はすごく楽しかった、というしおり。
「僕もです。こんなに楽しかったのは…」無言になる領。そして「最後にいい思い出ができました。会うのはこれが最後です。」と続ける。どうしてか?としおりが涙ぐみ聞くが、「そう決めてきたんです。」と、借りた傘のお礼を言い、出て行く領。
去っていく領の後ろ姿を、突然のことで、何も言えずに悲しい表情で見つめるしおり。

補導記録のファイルから、高塚が真中友雄の記録を発見する。一緒に補導された奴はいるか?と聞く芹沢に、高塚は驚き何も答えない。駆け寄る芹沢が目にしたのは、共同行為者の欄に、成瀬 領の名前があった。

しおりと別れた領は、悲痛な表情も残しながら、しかし、もう何の迷いもない魔王の顔になっていた。

取り残されたしおりは、領が返してくれた傘に手を触れると、子供の頃、雨の中、真中友雄に傘をもらった残像が見え、成瀬さんが…真中友雄…?だから会うのはこれが最後なのか?と全てがつながってしまったことに、驚愕するしおり。

がむしゃらに叫びながら、走る芹沢。頭の中には、これまでの領の会話が駆け巡る。
「よって弁護人は正当防衛による無罪を主張します。」
「真実は捩じ曲げられない、ということです。」
「心からお悔やみ申し上げます。」
「犯人に早くたどり着いてください。」
「一番犯人に近い人物は、あなたなのでは?」


玄関のドアを開ける宗田。作業服を着た2人の男が立っており、スタンガンで宗田を気絶させる。床に倒れる宗田。

ここで…つづく。