ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

魔王・第3話

~第3話~
教会の前でクマのぬいぐるみを抱いて泣いてる迷子の女の子、新谷空の頭を撫でながら、領は「迷子?名前は?」と色々質問をし、「どこから来たの?」という問いに、空は「遊園地。」と。しおりが誰と行っていたのか聞くと「お兄ちゃんと。」と答える空。領は、空をじっと睨むような目で見つめながら「空ちゃんのお兄ちゃん?」と聞く。空は、領の顔をじっと見つめながら、「知らない。」と答え、ニッコリ微笑む領。領と空の間に何か駆け引きがあるような感じにも思えます。

一方、病院に運ばれた石本は息を引取り、発狂する芹沢。

車で空を送っていく領。しおりは空に、クマのぬいぐるみを誰に貰ったかを聞くと、頑なに口を閉ざす空。その姿をミラー越しに、険しい眼差しで見つめる領。話題を変えるように「遊園地は面白かった?」と聞くと、その質問には「うん、魔法使いがいたよ。」と答える空。領がオーディオのスイッチを入れ、Over the Rainbowが流れ始める。「お兄ちゃんもお姉ちゃんも魔法使いなんだよ。だから必ずお母さんに会わせてあげるよ。」と空に言う領。何かひっかかるしおり、またミラーに映った領の目は魔王の目つき…。
空の自宅。玄関のドアを叩き呼び続ける空、しかし応答なし。領は、しきりに時計を気にしている。そこへ、空の母親、多恵がフラフラと戻ってくる。抱き合う二人をじっと見つめる領。多恵はクマのぬいぐるみを見て、石本のところで起こったことが脳裏にフラッシュバックする。多恵に自己紹介する領。しかし状況がよくわからず戸惑いを見せる多恵。

病院で、石本の亡骸に「ごめん。」と謝る芹沢。医師は、喘息の発作で病死と告げるが、納得いかない芹沢は、石本の死は病死ではなく誰かに殺されたんだ、と叫ぶ。

少し落ち着き、多恵は立ち去る領に何か言いかけるが、大家の姿が目に入り、やめてしまう。

しおりは、空のクマのぬいぐるみが気になる様子。
すべては予告殺人だったと警察の仲間達に話す芹沢。そこへ、しおりから、残像で見たクマのぬいぐるみを見たと芹沢に電話が入る。

車中の中で、ホテルを抜け出し芹沢の兄の妻、麻里といる葛西。そこへ芹沢から石本が殺されたと電話が入る。犯人は自分の周辺にいる人間を狙っていると告げる芹沢。葛西はショックを隠しきれない。麻里にうなだれかかるところを、カメラがフォーカスしている。

芹沢は、多恵の家のドアを激しく叩いている。大家が怒って出てくるが、警察だと名乗るとまた借金取り(石本)が来たかと思ったと。芹沢は、多恵を犯人だと思い込み、用心をするように父親と兄に連絡をする。商店街の中を空を背中におぶって、走り逃げる多恵。

多恵を探しまくる芹沢。ホテル中の従業員に多恵のことを聞いてまわり、給料の前借をお願いしていたこと、そして多恵宛の宅配便がホテルに届いたことを知る。
芹沢は、雨野真実が多恵を操り、殺したと判断。しかし、今回の被害者は友人だし、捜査は復讐ではない、冷静でない芹沢は中西に捜査から外れるように命じられてしまう。

クマのぬいぐるみを持ち、雨の中、しおりの店の前で立ち尽くす芹沢。女の子が持っていたクマのぬいぐるみはこれだったかとしおりに聞く。泣きながら、俺のせいだ…としおりに話す芹沢。そっと傘を差し出し、「刑事さんは悪くありません。」と言うしおり。

暗室の中、すごい形相で壁の写真を睨みつける領。そして、石本の写真に×マークをつけ、しおりの写真を見つめる。

ボーッと考え込む芹沢に差し入れを持ってくる同僚の高塚。そこへしおりから、雨野真実から宅配便が届いたと電話が入り、急いでしおりの元へ向かう。
箱を開けると、赤い封筒の中に〝女帝〟のタロットカードが入っていた。女帝は神話の中の女神。大地の母で自然の支配者を意味する、と告げ、残像を見るしおり。ハーモニカを踏みつけ逃げいく男子学生、廊下、建物の上の風見鶏を見る。芹沢は「あなたはオレが絶対に守ります。」としおりに言い、図書館まで送る。そこで領と出くわす。芹沢は、多恵が石本を殺した犯人だ、と領に告げると、領は粛々と「人生これからという時に命を奪われるとは、さぞかし無念だったでしょう。」と。「オレは犯人を絶対に許しません。必ずこの手で捕まえてみせる。」と言ってのけ立ち去る芹沢。領はしおりのことを脳裏に思い浮かべ、何とも悲しそうな表情で立ち尽くす。

しおりのところへも宅配便が届いたと中西に報告する芹沢。雨野はしおりの能力を知っていて、警察に協力していることも知っているのでは…と推測し、しおりを守るように芹沢に多恵と空の写真を渡す中西。

宗田は、本屋で立ち読みしている男、山野圭太(清水優)に、久しぶりだな、と声をかけるが、山野は嫌そうに、そそくさと立ち去ってしまう。

ホテルで打合わせ中の葛西と芹沢の兄、典良との間に一緒にいる麻里。そこへ、宗田が現れる。驚く葛西。麻里は急いで姿を隠す。葛西の制止を無視して、ズカズカと入り込んでくる宗田。そして典良に、何か仕事を斡旋してくれと頼む。典良は、冷たくあしらう。机の上にある麻里と典良の写真に気付き、慌てて宗田にわからないように写真立てを倒す葛西。そこに芹沢の父、栄作が入ってきて、仕事中だと言い宗田に金を渡す。宗田はニタニタ笑い、金を受け取り出て行く。宗田は、芹沢家にとって、ネックとなってくる人物のようだ。栄作に謝る葛西。宗田のようなクズと付き合うなと忠告する。

多恵の自宅を捜索する高塚。何も出てこないが、滞納していた家賃をすべて支払った人物がいる、と芹沢に連絡する。領である。領の事務所へ向かう芹沢の後ろ姿を不気味な笑いで見送る山野。そこで、領と話している多恵を見つけ、署に出向くように言う。領は、多恵に自分が弁護するから出頭するように諭す。
多恵は、娘がいなくなり、石本から借金を返さないと娘をどうかすると脅されていたので、てっきり誘拐されたと思ったと話す。石本が何故死んだのか?と質問する中西。多恵は机の上にピストルを置く。それは護身用の催涙スプレーだった。多恵は宅配便で誰かからこのスプレーが送られてきたと言うが、芹沢は石本の喘息を知っていて、スプレーで脅したんだろう、と多恵を攻める。しかし、護身用として持っていたと言い張る多恵。
興奮し、石本はそんな人間じゃない、と言う芹沢に、あなたが石本の全てを知っているわけではない、誰にも裏の顔がある、と落ち着くように言う領。多恵は、石本のところでクマのぬいぐるみを見て、娘を返せと石本に催涙スプレーを向けたが、スプレーを取られそうになり、噴射してしまった、と。
領は、「不幸な事故だったんです、よって弁護人は正当防衛を主張します。」と芹沢に静かに言い放ち、芹沢は返す言葉もなく領を睨みつける。
スプレーからは、石本の指紋が出て、供述通りの為、立件は難しくなる。芹沢の頭の中には、「領の正当防衛を主張します。」という声が響き渡る。

釈放され、お礼を言う多恵。領は「真実を証明しただけです。」と。そこへ芹沢が現れ、「そんなものは真実じゃない。」と言う。雨野誠実を捕まえて初めて真実がわかる、と。
「なら、捕まえてみて下さい。」と挑発する領。芹沢は、「二人も人が殺されているのに、それがあんたの正義ですか!」と食ってかかるが「じゃあ、あなたの正義は何ですか。正義の捕らえ方は人それぞれです。」ときっぱりと言い、雨の中を多恵と立ち去る領。すごい目つきで領を睨みつける芹沢、それを感じながらうすら笑いを浮かべる領。

教会。空がソファの上で眠っている。無実が認められた、としおりに言う領。しおりは、よかった、と言うが、多恵は、よくはない、かわいい空が人殺しの娘になってしまったと嘆く。領は多恵に人殺しでない、正当防衛だったのだから、と言っても、人を殺したことに変わりはない、自分を人殺しにさせた人間が憎い、と。顔を曇らせる領。

教会で祈りを捧げるしおりの横顔を見つめる領。領の気配に気付き、しおりは自分がサイコメトラーで事件に協力をしていたが、自分のせいで石本が死に多恵が殺人犯になってしまったのでは、と告げる。そして、自分の力は悪魔に利用されているような気がすると。
領はそっとハンカチを差し出し、「あなたが悪魔なら、世界中悪魔で溢れていますよ。僕にはわかります。悪魔は別のところにいるんです。」とキリストをじっと見つめる領。その顔は、せつない表情だった。
芹沢は、多恵の家の前で待ち構え、遊園地に一緒だった人物は誰だったのかを聞くが、空は「覚えてない。」と一言。諦めて立ち去る芹沢、空を抱きかかえ急いで家に入ろうとする多恵。一人の男がその光景を見つめて立っているが、その男に微笑み、ピースサインをする空。男もピースサインを返す。山野だった。

バスケットボールを持ち、歩いている少女の頃のしおり。恐ろしいものを見て、ハッと目が覚めるしおり。女帝のカードを見つめていると、呼び出した芹沢が見せに入ってくる。
女帝のカードが送られてきた意味は、送り主はしおりに死者の代弁者になって欲しいんじゃないかと思う、と告げる。そして、残像で見た風見鶏に見覚えがある、とその場所の道案内をするしおり。風見鶏の場所に近づいてくると、段々顔がこわばってくる芹沢。中学校の建物の上にある風見鶏を見つけ、しおりはあれに間違いない、と。芹沢は呆然となり、しおりにオレの中学だ、と言い、フラフラと歩いていく。廊下で、中学時代の友達の幻を見て、思い出したくない過去がひとつひとつよみがえってくる芹沢。そしてたどり着いたのは、領の弟が殺された現場だった。
今起きている事件、タロットカードの警告、中学の時の事件、ナイフ、手からこぼれ落ちたバスケットボール、踏みつけたハーモニカ、走りさって逃げいていく光景が、すべて走馬灯のように思い出され、過去と現在がリンクし、力なく座り込む芹沢。しおりが芹沢の後を追って来て見た光景は、ナイフが刺さって倒れている男子学生の姿…うなされて見た夢と同じだった。

墓参りをしている領は、これはまだまだ序章なんだ、復讐はまだ始まったばかり…、という決意の表情で立ち尽くすところで…つづく。