ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

流星の絆 第9話 ②

戸上家。手にノートを持って食卓につく行成。政行に何か言いたげだが、何も言えない。貴美子は、今度はいつ佐緒里(静奈)が来るのか?と朝からはしゃいでいる。しかし、行成がもう彼女は来ない、と答えると、喧嘩をしたのか?一緒にカナダに留学すればいい、と言う。行成は、ノートをカバンにしまい、早々と出かけようとするところへ、静奈から「有明です。兄と会っていただけないでしょうか?」と電話が入る。

ジョージクルーニー。戸上は功一を前にして、カウンターに座っている。「有明功一です。」と功一が名乗ると、驚きでしばらく声が出ない行成。「嘘でしょう?」静奈を見る行成。「兄です。」功一は毅然としている。行成は、動揺しながらこれまでの経緯を思い出す。静奈とのことを相談すると、いつも的確なアドバイスとくれたのは功一が静奈を陰で操っていたからだったのか…功一が正直やりやすかったと答えると、怒って掴みかかろうとする行成。泰輔が止めに入る。その泰輔を見て、自分に静奈と近づいた宝石商だと気づく。「弟です。」と言う功一の言葉に、更に驚く行成。

功一の部屋――「父が犯人だという根拠は、やはりハヤシライスですか。」
「あの味はたまたま一致するようなもんじゃないんですよ。」と答える功一。
レシピノートを見てしまった以上、否定するつもりはない、レシピノートに書かれているものはハヤシライス以外にとがみ亭の味に似ているものがある、ショックだったが、父は料理の味を盗んでも殺人はしていないそんな愚かな人間じゃない、とキッパリと言うと、泰輔は、事件の夜に政行を見た、政行が犯人だ、と憤りを隠せない。功一は冷静になるように言う。行成もそんな泰輔に対し「このノートだけでは殺人の証拠にはなりませんよね。」と言う。功一は認めるが、功一達にはもう一つ切り札がある、と言う。驚く行成。
「犯人は現場に忘れ物をしていった。いや、置いてったっていったほうがいいのかもしれない。指紋が拭き取られていたんですよ。つまり証拠にはならなかった。14年前はね。でも、今は違う。DNA鑑定という鑑定方法があるんです。汗や手の脂だって鑑定可能なんです。」と功一が言うと、「その忘れ物が何なのか教えてもらえるわけには…」と聞く行成。
「敵に切り札教えるバカどこにいるんだよ。」と、泰輔は呆れた顔で行成に言う。
「敵ですか…。」そんな行成のことを、じっと見つめる静奈。
すると行成は、少し考え込み「有明さん、もう一度やってみませんか?レシピノートを隠す作戦を失敗した。だから別の作戦でチャレンジするんです。今度は僕も協力します。」ととんでもないことを言い出す。
「何言ってんの?バカじゃねーの?本気かよ。」失笑する泰輔。
「よく考えて下さいよ。俺達に協力したら、捕まるのはあなたの親父だ。」と功一。
「わかっています。勿論、父が犯人だなんて思いたくない。でも、それ以上に真実が知りたいんです。事件があった夜、皆さんは星を観に行ってたそうですね。僕も観たんです、その夜、獅子座流星群。」決して冗談で言ってるんじゃない真剣な行成の顔を、3人はじっと見つめる。
そして、行成は、夕べ書庫で見つけたというノートをカバンから取り出す。朝、持っていたノートだ。そのノートは、子供の頃、政行と作った〝星の観測〟とタイトルのついた天体観測の記録ノートだった。行成達は、毎日、観た星の数を記録していたのだが、事件の夜の記録は、行成の欄には6つ観測した、と書かれているが、政行の欄には何も書かれていなかった。父にはアリバイがない、そして「やりましょう、有明さん。作戦を立てましょう!」と言う行成。

帰り道、泰輔は静奈に、まさか行成がこっちの味方をしてくれるとは思わなかった、と話す。静奈は、味方になるわけじゃないけど、行成なりにケリをつけたいってことだと思う、と答える。泰輔は、でも父親が不利になることをわざわざやるなんて、と言うと、静奈は、行成は損とか得とか考えない、まっすぐな人間なんだ、と答える。泰輔は、少し照れながら、行成はいい奴なのかも…静奈が惚れるのもわかる、と言うと、静奈はそんなことは言わなくていい、と怒る。

戸上邸。行成は政行の部屋に行き、警察が、政行のDNA検査をしたいらしい、と言うと、政行は、それは犯人のDNAがわかってるってことかな、と聞く。行成は、詳しくは知らないが、現場に犯人が置いていったものがあって、そこから割り出す、と言っていた、そしてブラシと髭剃りを提出した、と告げると、政行は、ざっくりとした説明だが構わない、と答える。政行の部屋を出て、複雑な気分の行成。

屋台で飲む柏原と萩村。柏原の携帯の待受は、功一と泰輔の写真になっている。それを見ながら、萩村は息子の写真じゃないのか?と聞く。そこへ携帯がなる。功一からだった。功一は、思わぬ方向へ展開した、と柏原に報告する。
「柏原さんのおかげですよ。」と功一。
「だけどよかった、俺もホッとしたよ。ずーっと引っかかってたんだ。兄弟3人助け合って生きてて欲しいってな。それは、俺やあの事件に関わった皆の願いだったからよ。」
「詐欺の常習犯でも?」
「それはまっとうに生きてるに越したことはねぇけど。バラバラよりはいいだろ。」
「そうかな…。」
「そうだよ。お前達3人の笑った顔見た時に、心底そう思ったよ。」
「遺族が笑ったっていいでしょ。」
「長かったもんな。14年か。」
「もうすぐ15年だ。」
「よく頑張ったな。」
涙ぐむ功一。「あのさ、食いに来てよ、ハヤシライス。自分、また作るからさ。本当だよ。いつでも作るからさ。」
「おぉ…そうだな。」

ジョージクルーニーでハヤシライスを作る功一。そこへジョージとサギが来る。
功一は「明日からしばらく休むんで、まかないの作り置きを…。」と言うと、
「そっか…いよいよ時効だもんな…。」とジョージ。功一は2人にハヤシライスを食べるか?と聞き、ジョージも食べようかな、と答える。サギも「私、好きだよ。ハッシュドビーフ。」と言うと、功一が「お前、今、何っつった?」と怒り口調で聞き返す。
「えっ?ハッシュドビーフだろ?」と言うサギに、「ハヤシライスだよ!」
「ごめん…そうとも言うよねぇ。」
「そうともじゃねぇよ、そうしか言わねぇんだよ!」
「何だよ、アクセル…怒ることないだろ。アクセルゥ。」
「俺のことを変な名前で呼ぶのは構わないよ。だけど、ハヤシライスのことを変な名前で呼ぶのは許さねぇんだよ!百年の歴史の味だぞ…ハァーッ!」怒りながらハヤシライスを差し出す功一は、まるで、父親の幸博にそっくりだ。