ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

流星の絆 第9話 ①

時効1週間前――静奈と行成は喫茶店に入り、行成はレシピノートについて、これは何か?正直に答えて欲しい、と言うが、静奈は知らない、と答える。行成は、高山が静奈のことを志穂と呼んでいたので、本当の名前は高峰じゃなくて、志穂があなたの名前ですね、と言う。留学の件も嘘で、自分を陥れるのが目的で、戸上家にこのノートを隠すことがために、偽名を使って自分に近づいたんだろうと言う。静奈は、俯き黙ったままだ。
店の外では、功一と泰輔がどうすることもできず、苛立ちながら二人の様子を見つめている。
行成は、一昨日、書庫に入ってノートを見つけた、と言う。表紙のアリアケの文字、中に書かれた洋食のレシピにも驚いたが、一番驚いたのは、匂いだと言う。静奈は手袋をはめて指紋をつけないようにしていたが、貴美子から貰った香水の香りがノートにうつってしまったらしく、その匂いで行成は静奈がやったんだとわかった、と言う。ノートを手にして、黙りこくる静奈。
行成はさらに話を続ける。問題は、なぜこのレシピノートを戸上家に隠そうとしたのか。
なぜノートを静奈が持っていたのか。その答えは、レシピノートに書かれたハヤシライスにある、と。レシピノートに書かれたハヤシライスは、とがみ亭のハヤシライスのレシピとほぼ同じで、静奈がとがみ亭のハヤシライスを食べて涙したのは、子供の頃に食べたのはアリアケのハヤシライスで、その幼なじみの友達の名前を矢崎静奈と言ったが、矢崎ではなく有明だったんだろう、と。警察が政行を疑っていて、このノートが自分ではなく警察が見つけていたら、決定的な証拠になるところだった、政行がアリアケの味を盗むために、有明さんを殺した、と。それが目的だったのか?なぜそんなことをしたのか?と矢継ぎ早に攻め立てる行成。そして、静奈に「黙っていちゃわかりませんよ、志穂さん!」と言うと、「違う…あたし、志穂なんかじゃない!そんな名前で呼ばないで!」と店内に響き渡るほど大きな声で怒鳴る静奈。行成は戸惑い、だったら何と呼べばいいのか?と聞く。
「静奈…。」「えっ?…矢崎…静奈さんですか?」と聞き返す行成。
「違います。有明です。有明静奈。それが私の名前です。殺されたのは私の両親です。事件の夜、兄は犯人を見ています。戸上政行。あなたのお父さんに間違いない、と兄は言っています。しかも、ハヤシライスの味が全く同じだった。それは、単なる偶然だと私にも思えません。」
形勢が逆転し、静奈の告白に声も出せず、呆然とする行成。「あなたも父が犯人だと…。」
静奈は、もう行成とは会わないつもりだった、今度会ったらプロポーズをされるかもしれない、と思っていたからだ、と言う。行成は、そのつもりだった、そして書庫に入ったのも、静奈に渡したいものがあり、それを作るためだった、とカバンから、〝カナダの家庭料理〝と書かれたノートを差し出す。静奈は涙ぐむ。
「静奈さん、最後にひとつ聞いてもいいですか?深夜、子供達が出かけている間に事件が起きた、と当時の新聞には書いてありました。何故、夜中に子供達だけで?」
「流星です…獅子座流星群を皆で観に行ったんです。」と答える静奈。

功一の部屋。ノートに香水の香りがうつったことで、行成にバレてしまったことを非難する泰輔。静奈は自分のミスを素直に謝る。冷静な功一は、ノートを行成が持って行ってしまったことが問題だ、と言う。万が一、行成が警察にノートを届けてしまったら、功一達の計画はそこで終わってしまう。証拠ねつ造から足がつき、自分達は警察に詐欺容疑で逮捕されてしまうだろう、と。泰輔は、もともと警察に見つけ出してもらうためにしたことだから、それでも構わない、と言う。しかし、静奈は行成は自分の父親が殺人犯だと証明する証拠だから警察には行かないだろう、直接父親に聞くと思う、と言う。功一は「俺が一番恐れているのは、何もしないことだ。時効が成立するまで、親父にも警察にも誰にも言わない。それどころかノート事体を処分することだって考えられる。」
「そんな卑怯な男じゃないよ。」と静奈。功一は「でも、自分の親が殺人犯だなんて、誰だって信じたくないだろうよ!時効まで見なかったことにしよう、と考えたって不思議じゃないんだよ。」と。泰輔は、あと1週間だから手を打たないと、と言う。
「柏原さんを味方につける。お前、捕まってもいいって言ったよな。時効が成立したら、俺達、一生、親離れできないんだぞ。もう迷ってる時間なんかねぇだろ…。」と功一。泰輔と静奈は、じっと功一を見つめる。

屋上。3人に呼び出された柏原がやってくる。
「柏原さん、この間言ってましたよね。刑事じゃなかったら犯人殺してやるって。そのくらいの覚悟でやってるって…。それ…信じていいんですよね。」と真剣な顔で、功一に言われ、功一を見つめるが一瞬目をそらす柏原。そして、静奈が現れる。静奈の姿に驚く柏原。「君があの時の…。参ったなぁ…。すっかり大人の女じゃねぇか。当たり前か。いくつになった?あれ?お前らずっと会ってないって…。」という柏原に、泰輔は「実は、施設出てから、ずっと一緒に暮らしてるんだ。ごめん…黙ってたのはワケがあって。」戸惑う泰輔の言葉に引き続き「俺達、詐欺師なんです。」と功一。そして、詐欺を働くまでの経緯を説明する。静奈が資格商法にひっかかり、そのお金を取り戻すために詐欺を働くことになったんだ、と。皆が面白いように騙され、弟や妹まで巻き込み、馬鹿なことをしたとは思っているが、きっとどこかで被害者の息子なんだから、何してもいいって、と開き直っていたんだと思う、と告げる。柏原は、そんなに冷静に分析できるのに、なぜこんな馬鹿なことをしたのか?と聞く。「生きていくためです。身よりもなくて、誰のことも信用できなくて、それでも生きていかなきゃならない。そんなこいつらに、これ以上辛い思いをさせたくなかったんです。すみませんでした。」頭を下げる功一。柏原は、自分に謝ってどうする?何故そんな話を今するのか?と聞く。3人は、理由を話し出す。
詐欺のターゲットを捜す過程で、戸上行成に出会い、その父親の政行は、事件の夜、アリアケの裏口から出てきた男にそっくりで、とがみ亭のハヤシライスはアリアケのハヤシライスの味と全く一緒だった、と。柏原もハヤシライスについては、アリアケの味に似ていた、と言う。そして、功一は、政行が犯人だ、という証拠を警察に掴ませようとしたことも白状する。悪知恵が働く、と呆れる柏原だが、泰輔は作戦通りに言っていたら、途中でネタばらしはしない、と言う。功一は、息子の行成に全部バレてしまい、切り札のノートが行成の手に渡ってしまって、正直もう打つ手がない、と泣きつく。
柏原は、「で、俺に何して欲しいんだよ。お前達がでっち上げた証拠じゃ、家宅捜索は難しい。俺達、警察が握っている切り札はひとつしかない。傘だよ。」
しかし、傘は指紋が拭き取られていたんじゃないのか?と聞く静奈。「その通りだ。証拠にはならない。だけど、脅しに使うことくらいはできるんじゃねぇのか?手段を選んでる場合じゃねぇだろ。」と言う柏原の言葉に、しばらく考え込んでいた功一は閃く。
「俺もあと一週間で引退だ。今日の話は聞かなかったことにするよ。」と柏原に言われて、
3人はホッとする。
再び、「柏原さん、すみません。」と謝る功一。「だから、謝んな…って。」と言い立ち去る柏原。