ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

『歌のおにいさん』 第1話①

♪歌おう 歌おう 笑顔でね! 歌おう 歌おう 元気よく!アヒルやカエルやワンちゃんもみんなで一緒に 楽しく愉快に グルグルグルグル ワンワン ガァガァ みんなでうたお パピプペポン!♪ スタジオで子供達と一緒に派手な衣装でやらされてる感丸出しで踊る矢野健太(智くん)。

ヤバい…超ピンチ…人生ってやつは何が起こるかわからない…。

ボーカルの健太だけ知らされてなかった、ライブでいきなりのロックバンドの解散宣言。「えぇーっ!」と驚く健太。恋人の明音にも「さよなら」とフラれる。
俺は仲間と恋人をいっぺんに失った。それが10日前の話。不幸は不幸を呼ぶと言うが、折からの不況で、内定取消を食らった…。公園の滑り台の上で、採用内定取消通知を見ながらため息をつく健太。滑り台待ちの幼稚園児から「早く滑ろよ~。」と後ろから押されて滑り落ちる。

(有)矢野金属プレス工業。健太の父 矢野光雄(小野武彦)は工場を経営している。
「就職しねぇだとぉ?金返せ。俺はなぁ、お前が工場継がないって言うから大学まで行かしてやったんだ。仕事しねぇっつんだったら、4年間の学費、全額返金しろ。」という光雄の言葉に、「はぁ~っ?俺は仕事しないんじゃなくて、内定取消されたんだよ。俺のせいじゃなくて時代が悪いんだよ!」と口応えをする健太。
しかし「同じことだ、働かないなら金返せ。」と言う光雄。姉のさくら(須藤理彩)からも「お父さん、浪人時代の予備校代も足しとく?ざっと770万円ね、ニートくん。」と電卓を手にニッコリされる。テレビからは、〝みんなでうたお!〟の番組が流れている。

ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!仲間もいねぇ、彼女もいねぇ、あるのは親父への借金だけだ。この上、ニートだなんて、冗談じゃねぇ!
しかし、履歴書を出す先、出す先で断わられる健太。ヤバい…マズい…ヤバすぎて言葉が見つからない…。ワァ~ッと叫びながら走る健太。

就職雑誌を手に、全力疾走中の健太。その就職雑誌には、人気の番組『みんなでうたお!パピプペポン』の仕事が掲載されていた。募集は制作スタッフと出演者アシスタント。健太はその仕事の面接を受けるために走っていたのだった。テレビ夕日に到着。すると赤い高級車が健太の前に突っ込んでくる。立ち止まっている健太は、背後から突進してくるおばさん集団に突き飛ばされる。「いってぇ…何なんだよ…。」と、倒れこむ健太の前に、赤い高級車から派手な装いの男が降りてくる。変なウィンクをして愛想を振りまく男を、唖然と見つめる健太。キザな男は健太に気付き、手を差し出し健太を起こし、ファンから貰った花束から、薔薇の花を1輪渡し、取り巻きと共に立ち去る。
「何だ…アレ。」と呆然とするが、面接の時間が迫っていることに気付き、慌てて走り出す。
面接会場を見つけ、入室しようとするが、さっきもらった薔薇の花を持ったままなので、清掃中のおばさんにあげる健太。そして、面接会場に入り…採用決定を言い渡される。喜ぶ健太だが、プロデューサーの真鍋杏子(木村佳乃)から「頑張ってね、歌のおにいさん。」と言われ、「歌のおにい…さん?」と疑問を抱く。部屋から出て、改めて就職雑誌を見て「何で歌のおにいさんなんだ?」と呟く。すると、清掃中のおばさんが、面接会場と表示されたボードの前から清掃のバケツを動かすと、そこには〝みんなでうたお!パピプペポン 新メンバー 面接会場〟と書かれており、驚く健太。そして、隣の部屋から面接を終えて出てくる人達を見て、その部屋のボードを見ると、制作スタッフ 面接会場と書かれていた。
「間違えた…。」と呟く健太。
ブルーとイエローのカラフルな帽子とコスチュームを着て、スチール撮影をする健太。しかし、顔は浮かない…笑顔もひきつっている。そんなわけで、俺…歌のおにいさんになっちゃいました…。

家の前でマジマジと恥ずかしい姿の自分の写真を見つめる健太。「だせぇ…。」と呟く健太の前に、光雄の工場で働く小山克己(金児憲史)が現れ、健太の写真を取り上げ、ちゃかす。家に入ると、光雄から、職探しはどうだ?と聞かれ、10年ローン返済計画書を渡される。月々の返済金額64,904円の額を見て、「そんな払えねぇよ!」と言い、計画書を破る健太。そして、「仕事ならもう見つかったよ。学費無駄にならなかったんだから、金、返さなくていいだろ。」と言うと「そりゃ職種によるわな。工場継ぎたくねぇ、大学に行って普通のサラリーマンになる、って言ったのはお前だぞ。大学出てねぇとなれない仕事なんだろうな。」と言い返され、戸惑う健太。そして、テレビの制作の仕事だと嘘をついてしまう。

テレビ局。健太は、撮影現場の扉を開くと、歌のおにいさんの氷室洋一(戸次重幸)と美月うらら(片瀬那奈)がオペラ調に童謡『雪』を歌い、踊っている。「あいつ…どっかで見たな。薔薇男…?」と呟くと、真鍋が現れる。
健太の他に、もう一人採用された新人 斉藤守(丸山隆平)がいて、氷室の前で自己紹介をさせられる。守は完璧な自己紹介をするが、その横で、抜け殻状態の健太。ボーッと焦点定まらず、宙を見ている。そして、氷室から自己紹介を促されるが、ボーッとしている健太に氷室は「頭悪そうな君、頭の悪そうな奴は、頭の悪そうな返事しか出来ないか?」と言われると「アホみたいな恰好した奴に言われたくねぇよ。」と吐き捨てる。凍りつくスタッフ達。
「今、何て言った?」と言う氷室に、「アホみたいな恰好っつったんだよ。大体何だよ、その白いタイツは。あんた、どんなセンスしてんの?」と言い返すと、「口を慎みたまえ!これは僕による僕のための僕が作った衣装だ!」と激怒する。
「意味わかんねぇ。」と呟く健太に、氷室を崇拝するうららは、氷室王子のおかげで番組の数字が取れていると豪語し力説する。スタッフ達はその言葉に、渋々拍手する。そして、うららは自分のことを〝歌のおねえさん〟と自己紹介し、氷室が〝歌のおにいさん〟と自己紹介したところで、やる気のない健太は「俺、帰ります。」と言って帰ろうとするが真鍋に首根っこを掴まれて止められる。

楽屋に置かれた犬と猫の着ぐるみを見て、守は「矢野くん、どっちがいい?」とワクワクしている。健太は、その横で不機嫌そうにイライラしている。
「俺達、歌のおにいさんに選ばれたんじゃないの?何であんなヘンテコ王子のバックで踊らなきゃいけなんねぇんだ。話、違わなくね?」と言うと、守から間違っていない、と台本を見せられる。台本には、健太と守は、ゆかいな仲間と記されていた。
キレた健太は「俺、マジで帰るわ。」と楽屋を出て行ってしまう。廊下を歩いていると、明音に偶然出会う。台本を慌てて隠す健太。仕事の関係で、局に来ていると聞かされ、戸惑う健太。立ち去る明音の後ろ姿を、ボーッと見つめていると、番組スタッフに背後から犬の着ぐるみをかぶせられ、スタジオに連れ戻される。
無理やり着ぐるみを着させられて、嫌々の健太の横で守はやる気満々。しかし、守はスタジオの様子を見て、子供番組なのに子供が一人もいないのは不自然だと呟く。それを耳にする真鍋。収録がスタートし、健太はやる気ナシナシで、歌劇調に『雪』歌う氷室とうららの背後で踊る。

翌朝、ベランダで伸びをすると、肩が筋肉痛で痛み、顔を歪める健太。下から、克己が新聞を手に健太を呼ぶ。新聞には、番組の記事が出ていた。克己に事情を説明し、口止めする健太。『雪』の鼻歌を歌いながら、朝食が出来た、と呼びにくるさくら。その鼻歌を聴き、くしゃくしゃにした新聞をかかえて、慌てて2階へ駆け上がる健太。朝食を食べている光雄の横のテレビからは、〝みんなでうたお!パピプペポン〟の番組が流れている。そして、収録した『雪』の曲が始まるところだった。リモコンを探すが見当たらず、急いで、テレビの前に立ちはだかり、歌に合わせて大きな動作で体操をする健太。光雄からテレビが見えないから、体操なんて外でやれ、と言われるが、朝っぱらからテレビなんて見てないで新聞を見ろ、と言ってしまい、新聞を見ようとする光雄から、新聞を取り上げ、落ち着かない健太と克己の態度に怒った光雄は、テレビを消してしまう。何とかバレずに安堵する健太。