ミミ言

思っていることをつぶやいていきます

『歌のおにいさん』 第2話

「矢野君、早く!」
「わかってるよ。」
「急いで!」
テレビ夕日の廊下を衣装がぶら下がったハンガーラックを転がしながら走る健太と斉藤。
「お待たせしました。」と斉藤と健太がラックとともにスタジオに入ると、氷室とその取巻きスタッフ陣が待っている。氷室は健太達の持ってきた衣装を全部ダメだと投げ捨てる。
「これ以上、何探せっつーんだよ!しかも、俺、衣装係じゃねーし。」とブツブツ言ってる健太に、斉藤は探してきます、矢野君、行くよ、とスタジオを出ていく。
氷室は「あーっ、うーんっ!」と言い、立ち上がると、健太にメモを渡す。メモには、氷室特製ヘルシードリンクのレシピが書かれていて、レシピ通りにジュースを作るように命じる。健太はレバーやイワシやゴーヤやニンニクやピーマンといった様々な野菜や高麗人参の粉末等をミキサーにかけてジュースを作り、氷室に持っていく。毒々しい色のジュースを差し出すと、「飲んで。作ってとは言ったけど、飲むとは言ってない。」と言う氷室。健太は皆が見守る中、鼻をつまみ、渋々ジュースを口にする。スタッフも冷ややかに笑っている。
健太が氷室に謝らないと宣戦布告した後、氷室はスタジオにいる限りは自分に絶対服従を誓うように言い、健太は最後まで抵抗するが、真鍋が出てきて、氷室に頭を下げる。
テレビ夕日の屋上。どうして戻ってきたのか、と健太に聞く真鍋。ここしかないと思ったなら、少しは頭を働かせて、黙って氷室の言うことを聞くべきだと言う。健太は自分は間違っていない、と答えるが、本当に大事なことのためには、間違っていました、と頭を下げることも時には必要なんだ、と言う。健太は腑に落ちないが、わかったと言い、真鍋と一緒に氷室の控え室に謝りに行く。

健太が頭を下げると、今回は真鍋に免じて許すが、以後絶対に逆らわないようにと忠告する氷室。

そして、それ以降、健太は氷室からの陰湿なイジメを受ける日々を送るのだった。
『どんぐり』の収録でも、裏で踊るどんぐり役の健太の踊りにダメ出しを何度もする氷室。怒りを抑えながら、何とか氷室に逆らわないように気をつける健太。何度も同じ踊りを踊らされ「大丈夫?」と言う斉藤に、「どんだけコロコロしたと思ってんだ…。」とヘロヘロになっている健太。しかし、そんな健太に、氷室は控室の掃除をしろ、と命じる。完璧主義者な氷室は、一度逆らった者には徹底的にやってやる!と言う。

疲れて家に帰ると、小山の田舎からどんぐりがたくさん送られてきたので、さくらと小山がどんぐりクッキーを作っているところだった。大量のどんぐりを見て「どんぐり…食うの?そんなかわいそうなことできるかよ!」と驚く健太。さくらにからかわれ、不貞腐れて雑誌をパラパラとめくっていると、光雄が入ってくる。一瞬にして、気まずい雰囲気が流れると、「健太、あんた今日仕事だったでしょ?どうだったの?」と気遣うさくら。
「どうって?」
歌のおにいさんの仕事。」
歌のおにいさんじゃねーよ。ゆかいな仲間たち。」
「ちゃんとやれたのぉ?」
「別に。どんぐりやってコロコロするだけだからな。目が回るくらいで大したことねーよ。」
「大したことねぇ割には、えらそうにしてんじゃねーか。おにいさんだかゆかいな仲間だか知んねぇけど、俺はお前のやってること認めたわけじゃないからな。」と言う光雄。健太は何も言わず、自分の部屋に上がっていく。
この間、光雄に殴られて健太が倒れた時に、床に落ちたサルのおもちゃが壊れたままになっている。

健太は、部屋に入り、ベッドに寝転ぶ。光雄に殴られたことを思い出し、「俺だってこんな自分、認めてるわけじゃねーよ…。」と呟く。

氷室の嫌がらせはエスカレートをする。ヘアサロンの予約、公共料金の支払い、マンション管理組合の会合、自分が今度出す新曲〝失恋 ひとり旅〟のポスター貼り、と雑用を健太に命じる。健太はうんざりするも、氷室は、真鍋の許可をもらっている、これも仕事のうちだ、と言い、真鍋が許可しているなら…と引き受ける健太だった。

氷室は、真鍋に、毎年恒例の公開生放送の際に、自分の新曲を歌わせるように言う。考えておく、と言う真鍋に、この場ですぐ返事をしろと迫る氷室。嫌々ながら承諾をする真鍋。

健太は、局内の廊下に氷室のポスターを貼る。そこへ、Giselleのポスター貼りをする安斉とガチ合う。張り合っている途中で、初めてそのポスターが、自分が元組んでたバンドのポスターだと知り、複雑な心境の健太。
しかし、マンションの管理組合の会合に参加しなければいけないことを思い出し、急いで出向く。タバコのポイ捨てについて苦情を言う住民の意見に適当に答える健太。話し合う気がないなら、あっちで子供と遊んでいろと言われる始末。
部屋に入ると、遊んでぇ~と子供達が群がってくる。「またガキかよ…。」と言う健太に、容赦なく群がる子供達。その子供達を振り切り、「やっかましいわっ!いいか、これから俺は昼寝すっから、邪魔すんなよ!」とメンチを切るのだった。
「マジやってらんねーや。」と寝ころんだところへ…テレビから『どんぐり』の曲が流れてくる。子供達は、揃ってテレビを見ている。画面には、どんぐりの着ぐるみを着て、コロコロする健太の姿が。ソロソロ~っと健太は、部屋を抜け出そうとすると、「あっ、どんぐりだっ。」と、どんぐりの歌を歌いながら、また子供達が群がってきて、身動きが取れない健太。♪どじょうが出てきて、こんにちは~。坊ちゃん いっしょに…「遊ばねーよっ!」と立ち上がり、怖い形相で子供達を睨み付け「代わりに、人生の厳しさ、きっちり教えてやるよ…。」と言うと、子供の親が様子を見に来る。
子供達は「これから、おにいちゃんがきっちり教えてくれるってぇ」と言うと、不審そうに「きっちり?何でございますの?」と親に聞かれ、「よ…よ…よい子の体操です。コロコロコロコロ…」と答え転がる健太。子供達も真似して転がると、子供の親はこれから買い物に出掛けるので、健太にもう少し遊んでてもらうように言い、去っていく。子供達を見ながら「コロコロしてんじゃねーよ。」と呟く健太。

テレビ夕日。収録時間が迫っているのに、健太の姿がなく、皆で探しまわっている。氷室は、自分の嫌がらせのせいなのに、真鍋にチクチク嫌味を言う。そこへ、慌てて走ってくる健太。「遅れてすみませんでした!」と入ってくると、「何をやっていたの?」と怒鳴る真鍋。健太は、氷室に雑用を頼まれて遅れた、と理由を話すと、「それがあなたの仕事なの?収録に遅刻してまでやらなければならないことだったの?物事にはね、優先順位ってものがあるのよ。そんなこともわからないの?」と健太を怒鳴る真鍋。氷室はしれーっとした顔で、「やれやれ困ったもんだ。」と言い立ち去る。健太は、納得いかないが何も言い返せない。

家に帰ると、さくらが待っている。ご飯は?と聞くが、いらない、と答え、部屋に直行する健太。そんな健太の様子を見て、さくらは、無理矢理食事を運んできて、自分はこれから友達と飲みに出かけるから、食べたら片付けておくように言う。そして「何か嫌なことでもあった?ちょっと悩み事があると、あんなすぐ食欲無くすから。」と言う。「嫌なことだらけだよ…。」と答える健太に「ちょっとの間ならさ、ニートやってていいんじゃない?やりたくないこと無理してやることないでしょ。母さんが生きてたらきっとそう言うと思う。」と言うと、「母ちゃん生きてたら、夜遊びしてないで、早くと嫁に行けって言うと思う。」と返すと、「そうかもねぇ。いや、やっぱりこう言うんじゃないかな。健太もお父さんも、いつまでもつまんない意地はってんじゃないわよって。子供の時は、あんなにお父さん子だったのにねぇ。」と言い、部屋を出ていく。
さくらの言葉がひっかかる健太。そして、子供の時に、サルのおもちゃが壊れた時、それを直してくれた光雄のことを思い浮かべる。
光雄は、工場で、壊れたサルのおもちゃを直してる。

公開生放送の日。「ワクワクするねぇ、矢野君。がんばろうね、矢野君。僕はこれに賭けてるんだ。今日ぐらいちゃんとやる気出してやってよね!」と張り切る斉藤。「あいつ、どんだけ気合い入ってんだよ。」いつもと同様、やる気のない健太。
ラジオ出演のために、明音達が局にやってくる。明音は、健太の写っているポスターを見る。

スタジオでは、リハの後、氷室の嫌がらせがまた始まる。ステージに、ホコリがついているから健太と斉藤に掃除をしておくように言う氷室。真鍋はスタッフにやってもらうからいい、と言うが、健太はモップ探してくるとスタジオを出ていく。セットの陰で、氷室と美月は釘を取り出している。

健太達が掃除をした後を、床に這って、くまなくチェックする氷室。そして、いきなり大声を上げる。「ちょっと来い!これ何だ?」と指さすと、釘が出ている。衣装が破れて、パンツが見えているのを指さし、文句を言う氷室。ついに健太がキレる。
「パンツ、パンツ、パンツ、パンツってうるせぇな!このパンツ王子が!セットの裏までいちいち見てられっかよ。釘ぐらいで騒いでんじゃねーよ、バーカ!」と言う健太。
氷室は、協調性のない人間と番組なんて作れないから、自分を取るか健太達を取るか決めろと迫る。真鍋は、またのらりくらりとかわそうとするが、氷室は納得しない。客が来ているので、返答を余儀なくされ、氷室の言うことを聞き入れる真鍋。健太は、斉藤は関係ないから、斉藤は出演させるように言うが、連帯責任だ、と氷室に却下される。そして、バケツの水をステージにまき、客が来るまでに拭いておけ、と出ていく氷室。謝る健太に、斎藤は、「もうたくさんだよ、一生懸命やってきたのに、何もかもめちゃくちゃだよ。」とスタジオを出て行ってしまう。真鍋も、何も言わず、出ていく。スタジオに一人残された健太。氷室が、こぼした水を雑巾で拭く健太。その様子を、明音が陰で見ている。

公開録画の収録がスタートするが、喜んでいるのは親ばかりで、子供達は全く楽しんでいない。
矢野家では、テレビをつけて、さくらと小山が健太の出番を待っている。光雄は、居心地悪そうに、場所を移動するが、気になる様子。
ラスト前のCMの間、氷室が歌うと言っていた新曲のテープがないことに気付くスタッフの一人。慌てて皆で探しまくる。斎藤が発見して持ってくるが、転んでテープが床を滑り、そこへ美月がやってきて、テープを踏み粉々にしてしまう。氷室は、ショックで帰ると言って出て行ってしまう。CM明けの出番がいなくなり、斉藤に出ろとスタッフが言うが、斉藤は生放送は絶対に無理だ、と怖気づいて震え出す。真鍋は、楽屋にいる健太の元へ行き、「あなたになら絶対に出来る!」と、服を着替えるように言う。

CM明け。セットの扉が開き…健太が出てくる。オドオドしながら出てきて、モニターに映る自分の姿を見て、かっこわりぃ…と顔をゆがめる健太。
だけど…認める。これが今の俺だ…。
そして、アカペラで、『おもちゃのチャチャチャ』を歌う健太。
さくらも笑いながら一緒に口ずさみ、「懐かしいね、お父さん。」と光雄に声をかえる。
光雄は、振り返り、童謡を歌うブラウン管の中の健太を見つめる。
沈んでいた子供達が、立ち上がり、健太の元へ駆け寄り、ステージに上がって一緒に歌って踊る。
スタッフも、そんな様子を見て微笑む。

そんなわけで、俺、歌っちゃいました…。